気候変動への対応 ~TCFD 提言に基づく取り組み・カーボンニュートラルへの挑戦~
日本パーカライジングは、2024年1月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、同提言に賛同する企業・金融機関等により構成されるTCFDコンソーシアムへ参画いたしました。TCFDフレームワークに基づいた情報開示を通して、ステークホルダーの皆さまに気候変動対応状況について説明責任を果たします。また、気候変動のシナリオ分析で特定したリスクおよび機会から評価した事業インパクトと財務への影響に応じて、適切な対応策を講じてまいります。
ガバナンス
サステナビリティ委員会において、TCFDに基づくシナリオ分析結果、気候関連の課題への対応策に関する事項、定性的目標と定量的目標の設定および進捗状況に関する事項などについて審議します。これらの審議事項は、本委員会より執行役員会および取締役会に年1回以上、適時報告され、取締役会はサステナビリティに関する活動を監督しています。
戦略
短期・中期・長期の時間的観点を踏まえ、気候変動がバリューチェーンにもたらす政策・規制や市場変化などによる移行リスク、異常気象などの物理リスクの中で、特に事業への影響が大きいと想定されるリスクと機会を当社が定めるリスクと機会の評価プロセスに従って、評価・特定しました。さらに気候変動という課題が持つ特性から長期の時間的視点において、2030年時点における当社のビジネス環境がどのように変化しうるのかについてもシナリオ分析を実施しています。シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照の上、脱炭素への移行が加速する「1.5℃未満シナリオ」「2℃未満シナリオ」と最も気温が上昇する「4℃シナリオ」の3パターンを想定しました。事業への影響が大きいと想定されるリスクと機会を下記のとおり特定し、2030年における財務影響を可能な限り定量化しました。
※参考シナリオ 移行リスクIEA NZE, IEA APS, IEA STEPS 物理リスクSSP1-1.9, SSP1-2.6, SSP5-8.5
シナリオ分析(1.5℃未満シナリオ)
シナリオ | リスク・ 機会分類 |
事業の影響 | 時間軸 | 総合評価 | 対応策 | ||||
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短期 | 中期 | 長期 | |||||||
1.5℃未満 | 移行リスク | 政策・ 法規制 |
脱炭素政策の躍進 | 炭素税の導入、クレジットの利用によるコストの増加 | ● | ● | 中 |
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原材料調達が困難 | ● | ● | 中 |
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市場 | 脱炭素・省エネの要請 | 低炭素化を求めるお客さまの要請の増加 | ● | ● | 大 |
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技術 | 顧客対応 | お客さまの技術革新への対応 | ● | ● | |||||
物理リスク | 急性 | 自然災害の増加 | 希少性原料の調達困難 | ● | ● | ● | 小 |
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異常気象がもたらす自然災害による操業停止 | |||||||||
機会 | 製品・ サービス |
市場の変化 | 既存市場の拡大 | ● | ● | 小 |
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新規市場対応 | ● | ● | 大 |
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シナリオ | 1.5℃未満 | 1.5℃未満 | 1.5℃未満 | 1.5℃未満 | 1.5℃未満 | 1.5℃未満 | 1.5℃未満 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
リスク・機会分類 | 移行リスク | 移行リスク | 移行リスク | 移行リスク | 物理リスク | 機会 | ||
政策・法規制 | 市場 | 技術 | 急性 | 製品・サービス | ||||
事業の 影響 |
脱炭素政策の躍進 | 脱炭素・省エネの要請 | 顧客対応 | 自然災害の増加 | 市場の変化 | |||
炭素税の導入、クレジットの利用によるコストの増加 | 原材料調達が困難 | 低炭素化を求めるお客さまの要請の増加 | お客さまの技術革新への対応 | 希少性原料の調達困難 | 既存市場の拡大 | 新規市場対応 | ||
異常気象がもたらす自然災害による操業停止 | ||||||||
時間軸 | 短期 | ● | ||||||
中期 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |
長期 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |
総合評価 | 中 | 中 | 大 | 大 | 小 | 小 | 大 | |
対応策 |
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1.5℃未満シナリオに基づく重要な戦略
戦略1
炭素税などの導入
事業活動から発生する排出量は、何の対策も講じない場合、事業成長に伴い増加することが予想されます。炭素税の導入を想定した場合、営業利益への影響は数億円規模となる可能性があります。そこで2030年までの野心的な排出量削減目標「売上高原単位CO2排出量(Scope1,2)の30%削減(2020年度比)」を設定し、当該リスクへの対応を確実に推進するものとします。
戦略2
原材料の調達困難
環境規制などにより新たな原材料の調達が発生する可能性が予想されます。原材料調達が困難であった場合は、営業利益への影響は十数億円規模にのぼる可能性があります。重要課題(マテリアリティ)に「持続可能なサプライチェーンの構築」を掲げているように、サプライヤーと協働で原材料の安定的な供給体制を構築し、さらに代替原材料を用いた製品開発と代替製品への適切な切り替えを推進するものとします。
戦略3
脱炭素対応
脱炭素に対するお客さまからの要請が高まっています。この要請に応えられない場合、受注が減少して数十億円規模の営業利益を喪失する可能性があります。重要課題(マテリアリティ)に「環境に配慮した新製品・新技術の開発」および「環境負荷低減への貢献」を掲げているように、お客さまの製造工程などにおける環境負荷低減を図るとともに、製品・サービスごとにCFP(カーボンフットプリント)算定を進め、CO2排出量を“見える化”することで、当該リスクへの対応を確実に推進します。
戦略4
新規市場対応
カーボンニュートラルを目指す動きが世界的に加速しており、脱炭素市場の急速な拡大やそこで求められる革新的な技術開発が活発に行われています。重要課題(マテリアリティ)に「表面改質技術を生かした新規分野の開拓」を掲げているように、リーディングカンパニーとして長年にわたって培った独自の表面改質技術をもとに、新規市場向けに積極的に製品展開を行います。
リスク管理
気候関連リスクの特定・評価プロセス
当社では、気候リスクの特定・評価はサステナビリティ委員会で、それ以外の事業リスクの特定・評価はリスク管理委員会で行っています。
サステナビリティ委員会は、TCFDの提言に基づいたシナリオ分析を行い、重要なリスクおよび機会を特定し、影響の度合いを評価しています。
事業リスクについては、気候関連の移行リスク・物理リスクの特定・評価を実施し、「影響度」と「発生可能性」などのリスク評価基準に照らし合わせ、全社横断的な統一のリスクシートを用いて実施しました。「影響度」は営業利益を基準に4段階で評価し、「発生可能性」は発生頻度に応じて4段階で評価します。最終的にはリスクの重要度から16段階で評価され、経営者の目線からリスク間の相対的な関係を考慮した上で対処すべきリスクの優先順位を決定しています。
気候関連リスクの管理プロセス
事業などのリスクは、重要性をもとに組織で対応策を立案、実行し、進捗・管理し、継続的に改善する活動を展開しています。気候関連の移行リスクおよび機会への対応については、環境戦略に反映させ、目標・計画に落とし込み、環境パフォーマンスの向上やリスク管理に関わる施策を推進・展開し、PDCAを回して改善を進めています。
総合的リスク管理との統合
当社グループは、事業目的の達成を阻害する恐れのあるさまざまなリスクを効果的、効率的に管理するため、リスク管理委員会を設置しています。本委員会は、経営リスク(オペレーショナルリスク)を中心とするリスクマネジメント活動を統括し、当該リスクに対するアセスメントを実施し、その評価・管理・対応策の検討を行い、内部統制委員会へ報告しています。なお、気候変動に関するリスクについては、サステナビリティ委員会が主体となってマネジメントしており、両組織は全社的なリスクマネジメント活動において相互に緊密に連携・協力して対応しています。
指標と目標
2050年カーボンニュートラル達成に向けて、当社単体(Scope 1+2)のGHG排出量を2020年度比で2024年度までに5%削減、2030年度までに30%削減を目標としていましたが、現在、再生可能エネルギーの導入を積極的に実施しており、省エネ活動の継続や太陽光発電による自家消費も検討しているため、2030年度の目標は前倒しで達成できる見通しです。今後は国内外連結子会社を含めたGHG排出量削減目標を設定して、グループ全体でカーボンニュートラル達成を目指していく方針です。
Scope1,2,3のGHG排出量
開示しているGHG(温室効果ガス)排出量の透明性と信頼性を保証するため、第三者の外部機関(ソコテック・サーティフィケーション・ジャパン株式会社)による検証を受けています。